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若手地銀マンの安定ライフ①~内々定者時代~

ー「全国転勤なし」「高給」「地域No.1ブランド」「絶対につぶれない」―

地方に根ざし、安定した(加えて、ちょっとだけ良い)生活を送れる就職先として名高い、地方銀行。しかし、銀行で具体的にどのような仕事をするのかについて、具体的なイメージを持てる方は、実は多くないように思えます。
このシリーズでは、新卒で茨城の地方銀行に入社した筆者が、安定した生活を得るまでのストーリーをご紹介していきます。


―「他の企業は、もう辞退しましたか?」―


最終面接で、採用担当の方と握手を交わしてから一晩が過ぎました。
興奮冷めやらぬ中でしたが、この日も志望度の高い企業の面接が残っていました。
「一応受けるだけ受けておこうかな」と思っていた矢先、9:30に携帯が鳴りました。選考の途中でお世話になっていた、リクルーターの方からの電話でした。
「○○くん、改めて内々定おめでとう!○○くんと、一緒に働けるのをとても楽しみにしているよ!今度懇親会もあるから、また話そうね!」
その方は、面接の前後でお話しする機会が何度もありました。なおかつ、高校と大学の先輩であるとわかり、まさに理想の先輩そのもの。いつか一緒の支店で働いて、勉強させてもらって、いずれは追い越していきたい―そう意気込んでいたときでした。「ところで、・・・」


「他の企業は、もう辞退しましたか?」


その瞬間、最終面接にて面接官の方に「当行に内定したのですから、他の企業は、辞退してくださいますね?」と質問されたことを思い出しました。もちろん、「No」とはいえず・・・そしてこの時も、


「はい、もちろん!」


そう答えていました。
次の日にわざわざ電話をしてくれる会社が悪いわけないし、さすがに申し訳ない・・・電話が切れた後すぐに、選考途中の企業4社に、選考辞退の連絡をしてしまいました。

 

 

―「いっちょ ソバット あなたのそのハート いただきますっっ!!」―

 

7月の中旬ごろ、内々定者全員を集めた懇親会が開催されました。場所はホテル・マンハッタン。さすが、地元で最大手の企業は資金力が違います。
集まった同期は200人。中には、面接の際、待ち合わせ室で同席し、「こいつと一緒に働きたいな」と思っていた顔もありました。
懇親会は8名ひとテーブル。各テーブルには数名、本部の部長職の方、中には役員の方もいらっしゃいました。当時は、どれだけ偉い方々だったのかわからなかったため、何気なく話しかけてしまいましたが、皆さま優しくお話ししてくださいました(今ではとてもできません)。
会も終わりに近づいてきたころ・・・
最後に、今までお世話になっていたリクルーターの方々が壇上に上がられました。リクルーターとは、選考の過程で、座談会のモデレーターや、選考日程調整の連絡をくださっていた方々です。突然鳴り響いたのは、、、

 

「行くぜ!怪盗少女」

 

住宅ローンをメインで担当されていたとおっしゃっていた男性行員のエビ反りジャンプには、目を見張るものがありました。
きっと皆さま、忙しい時間の合間を縫って、我々のために練習をしてくださったのだなあ・・・そもそも、そこまで忙しくなかったりするのかな?
あの先輩方のように、余裕があって、素敵な銀行員になれたらいいなと、心から思いました。

 

 

―「おれ、明日まじで出たくないんだよね」―


夏の暑い日差しはどこかへ通り過ぎ、夜には少し冷えて、羽織りものが欲しくなってきた、9月の末日。内定式の前日です。
10月1日の内定式とは、懇親会以来、久しぶりの会社のイベントであると共に、
相手企業との『契約関係』が成立する日です。
内々定」とは、いわゆる『採用予定』ということであり、企業との間に何も契約関係等は発生しません。内定式で「採用内定通知書」をもらうことで、学生と企業の間で労働契約が締結されることになります。具体的には、『始期付解約権留保付労働契約』と呼ばれます。 


「始期付」=“内定から入社までに”
「解約権留保付」=“やむを得ない事由が発生した場合には内定を取り消しできる”


だいたいこのようなイメージです。要するに、卒業までに何かやらかしてしまう(刑事事件や、経歴の詐称など)と、企業側から、その学生の内定はく奪ができるということですね。「単位が足りなくて卒業できなかった」事例もこれに当たります。
単位も取り切ってるし、何よりこんないい会社を辞める理由なんてない、そんな私には関係ない話だなと思いつつ、懇親会で仲良くなった同期にラインを送ってみました。 


「明日内定式緊張するね!」


しかし、メッセージがなかなか既読になりません。22:00頃、ようやく返ってきたメッセージには、こう書かれていました。


「おれ、明日まじで出たくないんだよね」


その内定者は、理科大の体育会に所属していて、まさに明るさと元気さが取り柄、といった学生でした。
いったい彼に、どんな心境の変化があったのか・・・私は恐る恐る、「どうした?」と聞いてみました。


~次回②内定者時代編へ続く

 

※この物語はフィクションです。