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若手地銀マンの安定ライフ②~内定者時代~

「全国転勤なし」「高給」「地域No.1ブランド」「絶対につぶれない」―地方に根ざし、安定した(加えて、ちょっとだけ良い)生活を送れる就職先として名高い、地方銀行。しかし、銀行で具体的にどのような仕事をするのかについて、具体的なイメージを持てる方は、実は多くないように思えます。

このシリーズでは、新卒で茨城の地方銀行に入社した筆者が、安定した生活を得るまでのストーリーをご紹介していきます。

■前回までのあらすじ

内定式を前日に控えた夜、仲の良い内定者に連絡すると、「明日行きたくない」というメッセージが帰ってきた。

いつもは元気な彼に、一体何があったのだろうか・・・恐る恐る、理由を聞いてみました。

―「銀行の仕事のこと、何にも知らないんだなって気づいてさ」―

どうした?という私の問いに、彼はこう答えました。

「『半沢直樹』観てる?あれ観てたら、銀行で働くの怖くならない?」

半沢直樹』とは、銀行内外の不正を描いたテレビドラマで、2013年7月より放映されていました。取引先が倒産し、支店長に融資金5億の回収を要求されるところから物語は始まります。主人公・半沢の「やられたらやり返す、倍返しだ!」というセリフが流行語大賞をとるほど、当時はとてつもない注目を浴びていました。

主演・堺正人の名演もさることながら、何より注目を集めたのは、今まであまり知られることのなかった「銀行の裏側」が描かれたことでしょう。年間融資100億という過酷なノルマ、恣意の入り混じる人事考課、国税庁金融庁の監査の実態・・・銀行で働くことのイメージを持つことの少なかった視聴者には、かなりセンセーショナルな内容であったと思います。

「あれはあくまでフィクションだろ」

「確かに盛られてると思うけど、ほんとにあんな雰囲気だったらどうする?」

「やってけないな」

「銀行の仕事のこと、何も知らないんだなって気づいてさ。銀行員が毎日何をしてるのか、どんな雰囲気なのかわからないから、不安がぬぐえない」

・・・思い返せば、就職活動をしていた時、説明会などでは法人営業・個人営業の概要について軽く説明を受けて、あとは「自分の力を試せる」「色々な企業について勉強できる」「地域経済を動かす実感が持てる」といった魅力・やりがいについて強く説明されていた覚えがあります。リクルーターの方々も「『辛いことはもちろんあるけど』、やりがいあるよ」と口をそろえて仰っていました。「ノルマがありますよね?」という質問にも、「確かにあるけど、それをみんなで乗り越えようとする雰囲気があるよ」という返答され、これ以上突っ込まずにいました。

「人もいいし、いいとこなのは確かだけど、銀行のこと何もしらないってのは同じだな・・・」その時、私には彼を励ますことができませんでした。

―「12月に、試験を受けていただきます」―

内定式は、以外とあっさり終わりました。午前中に、本部のホールに集められて、人事部長の話を聞いて、内定承諾書をささっと書いて、終了。

その後、今後のスケジュール表と共に、分厚いテキストが渡されました。

「12月に、試験を受けていただきます。『証券外務員試験1種』という試験です。落ちてしまうと、金融商品の販売自体が出来ません。仕事になりませんので、必ず合格してください」

研修担当の方から、このような説明がありました。

証券外務員試験とは、日本証券業協会が仕切っている試験で、この資格がないと、金融商品の販売が認められません。ただ銀行や、証券会社に就職すれば、株や投信を売れる、というわけではないのです。日本証券業協会によると、「投資家保護の観点から、外務員には金融商品に関する専門知識や法令諸規則を遵守し、公正かつ健全な取引をする」(ホームページより)ために、必要とのことです。

試験内容は「法令・諸規則」「商品業務」「関連項目(証券市場の基礎知識等)」「デリバティブ取引」の大きく4分野あります。前3つが『証券外務員二種』の試験範囲で、それに「デリバティブ取引」を加えたものが『証券外務員一種』の範囲となります。銀行によっては、二種のみでよいところもあるそうです。

4つ目の「デリバティブ取引」については、仕組み自体がイメージし辛いことと、計算問題が絡んでくることから、勉強に時間を要しました。他の分野については、過去問に似たような問題がよく載っているので、過去問を3周すれば対応できる内容でした。合格ラインは70点ですので、完璧を目指さなくても、基本問題を落とさなければ無難に合格できる試験であると思います。

11月の初めから、1ヶ月ほど集中的に勉強することで本番を万全の状態で迎えることができました。ただ、「落ちたら仕事にならない」とまで言われていたので、プレッシャーはかなりありました。合格まで、ドキドキしながら年末を過ごした記憶があります。

―「だるいな」―

1月に、証券外務員試験の合格通知が本部より届きました。これで、スタートから出遅れることはなくなり、一安心。あとは、大学の卒業、および入行式を待つだけになりました。

4月に内々定を頂いてから、もうすぐ1年がたちます。いよいよこれからが本番です。

3月の末日に、仲の良い同期からラインが来ました。

「だるいな」

私は「そうだな」と返し、眠りにつきました。

~次回③入行式編へ続く

 

※この物語はフィクションです。