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若手地銀マンの安定ライフ⑤~窓口業務編~

「全国転勤なし」「高給」「地域No.1ブランド」「絶対につぶれない」―地方に根ざし、安定した(加えて、ちょっとだけ良い)生活を送れる就職先として名高い、地方銀行。しかし、銀行で具体的にどのような仕事をするのかについて、具体的なイメージを持てる方は、実は多くないように思えます。

このシリーズでは、新卒で茨城の地方銀行に入社した筆者が、安定した生活を得るまでのストーリーをご紹介していきます。

■前回までのあらすじ

何故か新卒パンフレットを作らされた導入研修を終え、支店でのOJTに取り組む。預金の基礎がわかってきたところで、休暇明けに「ハイテラー」へのポジションチェンジ令がいい渡される―

 

―「番号札回収し忘れた?何やってるの。今すぐ、客に電話して、粗品もって回収してきなさい。必ず今日中に捕まえること」―

ハイテラーとは、窓口に立って、現金の入出金や振込等を行う人のことです。いわゆる「窓口のお姉さん」です(私は珍しく「窓口のお兄さん」でしたが)。

銀行によって差はあるみたいですが、私の銀行は窓口の方のことを「テラー」と呼んでいました。基本的な業務を行う方をハイテラー(受付・お返しを高いテーブル上で、立ったまま行うことに由来しています)、一方で、区切りのあるブースにて、口座作成や資産運用の相談に乗る、いわゆる相談窓口の方をローテラーと呼んでいました。

ハイテラーの特徴は、「一人で基本業務のすべてを完結できること」です。預金後方で伝票を打っていたときは、隣に検印の方がいて、ダブルチェックでミスを見過ごすことはほとんどありませんでした。一方、ハイテラーは、伝票を検印に見せることなく、自分で受付して、自分で打って、自分でお返しすることができます。テーブル横に小さな現金出納器もあるので、現金の出金も自分でできます。故に、一連の処理プロセスに何か不備があっても、誰も気づかないまま、お客様を帰すことになってしまいます。

ある時、3時にシャッターが閉まったあと、「番号札が足りない」という声があがりました。

伝票を見返してみると、原因は私とわかりました。私が入金処理を受け付けたお客様から、番号札を回収し忘れたようです。

上席に報告すると、

「番号札回収し忘れた?何やってるの。今すぐ、客に電話して、粗品もって回収してきなさい。必ず今日中に捕まえること」

とのことで、すぐに客の口座情報を開き、登録の番号に電話をしました。幸い、ご自宅にいらっしゃり、かつ番号札もお持ちだったので、営業車で回収に向かえましたが、もしどこかで落としてしまっていたりしたら・・・と思うと、背中から汗が吹き出しそうになります。

テラーの仕事は、銀行の基本原則たる「正確・迅速・丁寧」が、最も体現される仕事かもしれません。

最初はどぎまぎし、かつ先輩にいやというほど質問し、お客様に遅いと怒られながら仕事をしていましたが、3週間もすると不思議と慣れてくるものです。業務をミスなくこなし、お客様の複雑な注文を処理したり、繁忙時間のお客様の捌き方も気にする余裕がでてきました。

時は8月末。月末最終日の大混雑を切り抜けて、3時にシャッターが閉まった業後、支店長応接に呼ばれました。

「お疲れさま。副支店長から、テラーよくやってくれていたと聞いているよ。で、明日からプロパー窓口ね。あ、昼休みは引き続きテラーの応援入ってもらうから、よろしく」

・・・突然のプロパー窓口デビューが待っていました。

・・・「プロパー」って、なんだ・・・?

~次回⑥融資編へ続く~

 

※この物語はフィクションです。