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若手地銀マンの安定ライフ⑧〜ローン営業編II〜

「全国転勤なし」「高給」「地域No.1ブランド」「絶対につぶれない」―地方に根ざし、安定した(加えて、ちょっとだけ良い)生活を送れる就職先として名高い、地方銀行。しかし、銀行で具体的にどのような仕事をするのかについて、具体的なイメージを持てる方は、実は多くないように思えます。
このシリーズでは、新卒で茨城の地方銀行に入社した筆者が、安定した生活を得るまでのストーリーをご紹介していきます。

■前回までのあらすじ

 

現在取り組むは、住宅ローンのシフト(借換)推進営業。夜な夜な住宅地を回り、インターホンを鳴らし続ける毎日。お客からのクレーム電話というアクセントが胸にささる。いつになれば、成果を出せるのであろうか…

 

 

「〇〇、自分の立場を自覚しろよ。2ヶ月やって実績ゼロとか営業としてありえないからな?」

 

時は2月。私は日中、ハイテラーとして窓口に立っていました。後から知ったことですが、私のいた支店は来客数が多く、かつ客層も悪いことで有名で、「異動したくない店No.1」と行内で言われていました。2月、3月は受験シーズン。受験料、入学金の振込で来客数がいつもの1.5倍ほど増え、窓口が回らなかったのです。そこで、昨年夏にハイテラーを経験した私が、ピッチヒッターとして投入されました。

だからと言って、営業のノルマが減るわけではありません。窓口が閉まる午後3時までは窓口をやり、3時以後は住宅地を回る毎日でした。

 

 

私は、返済予定表を週に一度は持ってこれるようになっていました。しかし、申込書の記入までたどり着きません。

ある人は、借金が多く、かつ独身のため簡易審査にも通らない(独身の人は、住宅ローンの審査が通りにくくなります)

ある人は、属性は悪くないが、担保価格が足らず簡易審査に通らない(辺鄙なところに建っていたり、建物が古かったりすると、将来売ったときの価格が低くなるため、審査が厳しくなります。また、田舎にいけばいくほど、土地が安くなり、住宅ローンの審査も厳しくなります)

ある人は、属性問題なし、家も新しめ、だが土地の持主であるお爺ちゃんが北海道のホスピスにいて、契約書にサインできない(家の土地と建物の所有者が別の場合があります(お爺ちゃんの持つ土地の上に建物を建てた場合など)。住宅ローンを組む際、土地と建物両方を担保に取らないと売りに出せないため、土地と建物両方の所有者と契約を結ぶ必要があります)

 

さて、営業のシマには、「夕会」と呼ばれるものがあります。その日の結果を上司に報告する場です。支店の数字が芳しくない月末は、空気が冷え切り、留置場での尋問さながらの時間が待っています。

返済予定表を持ってこれなかった日の夕会は、死地に赴く気持ちで自分の番を待ちます。

 

「〇〇件訪問し、有効面談△△件、返済予定表は本日も0でした。本当に申し訳ございません!」

 

最初は何も言わなかった営業次長も、段々耐えられなくなってきたのか、ある日こう言いました。

 

「〇〇、自分の立場を自覚しろよ。2ヶ月やって実績ゼロとか営業としてありえないからな?」

 

背筋が凍りつくのを感じました。

その日の夜は、いつもより長くピンポン営業をしていたのは、言うまでもありません。

 

2月の夜は、まだ寒さが引きませんでした…

 

〜次回⑨ローン営業編III(完結編)へ続く

 

※この物語はフィクションです。