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若手地銀マンの安定ライフ⑨~ローン営業編III~

「全国転勤なし」「高給」「地域No.1ブランド」「絶対につぶれない」―地方に根ざし、安定した(加えて、ちょっとだけ良い)生活を送れる就職先として名高い、地方銀行。しかし、銀行で具体的にどのような仕事をするのかについて、具体的なイメージを持てる方は、実は多くないように思えます。
このシリーズでは、新卒で茨城の地方銀行に入社した筆者が、安定した生活を得るまでのストーリーをご紹介していきます。

 

■前回までのあらすじ
窓口と営業、二足のわらじを履きつつ、営業夕会で処刑される毎日。喉が渇き、身体からは嫌な汗が噴き出す。一体いつになれば、この苦しみから逃れられるのだろうか…

 

 

ー「旦那と日曜しか会えない?仕方ない。お前、休日出勤して一人で提案してこい。絶対申込書までもらってこいよ」ー

 

3月に入り、ようやく希望のある案件が舞い降りてきました。インターホンを鳴らすとすぐに出てきて、借換の提案が出来た奥様。債務者の旦那様は、会社役員で給料も多く、属性問題なし。借換で200万ほどメリットがでる、理想的なお客様でした。

奥様は借換に乗り気でした。しかし、「最終決定は旦那様」「旦那は出張続きで日曜しか帰ってこない」とのことです。聞くところによると、3月中旬の日曜しか会う時間がないとのことでした。

そのことを上司に相談すると、

 

「旦那と日曜しか会えない?仕方ない。お前、休日出勤して一人で提案してこい。絶対申込書までもらってこいよ」

 

とのお言葉を頂きました。

 

住宅ローンの借換のセールスは、基本的に家にいる時間の多い奥様から切り崩すことが多いです。しかし、どうしても働いている旦那様と会わなければ行けないタイミングが2回あります。ひとつは申込書の記入、もうひとつは審査通過後の契約です。

旦那様は大体平日仕事で、帰りが遅い方も多く、平日はなかなか会う時間が取れません。そうなると、必然的に土日に会わなければ行けなくなります。

"銀行は土日祝は絶対休み"というイメージを持たれがちですが、こと住宅ローン営業担当にはそれが当てはまりません。休日出勤、夜間勤務が日常的になります。本部のローン専門部隊は、最初からシフト制で平日休みになっています。

 

さらに、時は3月。決算月です。3月の業績は、ダイレクトに会社の決算書に跳ねてきます。故に、数字に対するプレッシャーが普段の2倍増しになると共に、「どんな手を使ってでも今月中に融資を完了させろ」ということになります。

 

3月中に借換を完了させるには、その日曜日に申込書+必要書類を完璧に受領し、すぐに審査を通すしかありません。自身初のローン本申込は、一人かつ失敗が許されない状況でのチャレンジとなりました。

 

 

ー「次に会えるのが31日?仕方ない。お前、31日に契約・完済手続・実行まで全部出来るよう客と仕切れ。お前の案件がないと住宅ローンの目標いかないんだから、絶対ミスるんじゃねえぞ」ー

 

来たる日曜日。「なぜ休みの日に下り電車にのり、この街へこなければならないのだろう」という思いを抱えながら、営業車に乗り込みました。面談は12時から。途中、イオンのマクドナルドで食べたハンバーガーの味は今でも忘れられません。

 

提案は、結果上手くいき、申込書に記入をして頂けました。書類も無事。途中8回位先輩に電話をしましたが、無事完遂。

終了後上司にメッセージを送ると、「お疲れ様。明日、書類を預かりにいくんだよな?抜かりない様に」とのお言葉。そう、日曜は支店が締まっているため、お客様の大切な書類を素で預かれないのです。

 

次の日、先輩と一緒に奥様の元へ。書類を預かり、即刻審査に上げたところ、一番いい条件で審査が通りました。

さて、残るは契約です。奥様に連絡を取ると、

 

「審査通ってよかったです。旦那は、31日なら午前休取れます」

 

とのことでした。

 

住宅ローンの審査が通った後は、

"①契約→②現在借りている銀行に行って完済の申込(大体、申し込んでから3日後以降に完済予約が出来るところが多いイメージです)→③完済予定日に融資+完済銀行に振込"

となります。特に①と②は、旦那様に足を運んで頂く必要があります。また、

 

さて、旦那様と会えるのは31日。①②③の手続きを同日にできるのか、初めての私はわかりませんでした。その旨を上司に相談すると、

 

 

「次に会えるのが31日?仕方ない。お前、31日に契約・完済手続・実行まで全部出来るよう客と仕切れ。お前の案件がないと住宅ローンの目標いかないんだから、絶対ミスるんじゃねえぞ」

 

同日にやらない選択肢はないとのことでした。

 

結局、31日までに契約に必要な書類を奥様に準備して頂き、

31日の朝一で契約→その足で旦那様は銀行で手続き+私が近くで待機→手続き終了後、完済日の日付で支払伝票受領→支店に連絡して、融資実行+融資金は完済日まで別口座にプール

 

という、やり方で、無事ローンの実行を遂げました。

 

初めてのローン実行=売上計上は、綱を渡るような、デンジャラスな経験となりました。でもこれで、支店の住宅ローン目標は達成です。

ほっと一息ついていると、支店長(神様)が御神託をくださいました。

 

「ローン実行お疲れ様。来期も頼むよ。あと、明日から預かりもしっかりやってもらうから、よろしく」

 

…シフトに比べて、預かりも…?

…ていうか、預かりってなんだ…?

 

〜次回⑩預かり資産営業編Iへ続く

 

※この物語はフィクションです。