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若手地銀マンの安定ライフ⑫~預かり営業編Ⅱ~

 

「全国転勤なし」「高給」「地域No.1ブランド」「絶対につぶれない」―地方に根ざし、安定した(加えて、ちょっとだけ良い)生活を送れる就職先として名高い、地方銀行。しかし、銀行で具体的にどのような仕事をするのかについて、具体的なイメージを持てる方は、実は多くないように思えます。

このシリーズでは、新卒で茨城の地方銀行に入社した筆者が、安定した生活を得るまでのストーリーをご紹介していきます。

 

■前回までのあらすじ

住宅ローンの推進と合わせて、預かり資産の営業も同時にやることになったchigin。電話セールスをしてもなかなかうまくいかず、夕会で詰められる日々・・・

 

 

―「数字いってないお前が悪い。数字いってない営業には丸々ないからなー(笑)」―

 

4月の末、とあるお客様とアポイントがとれました。名をHさんとします。Hさんは69歳のおばあちゃん。定期預金に100万円ほどあり、使い道もないとのことでした。お手本通りのセールストークで、来店誘致。2日後に、ご来店いただけることになりました。

 

ご来店。ブースに入ると早々に、セールス開始です。

「最近低金利なのはご承知かと存じます。100万円預けても、1年で200円しか利息が付きません」

「前は10年で倍になったのにねえ」

「更に、最近物価があがってきていますよね。”物価の優等生”といわれる卵が値上がりしたんですよね」

「そうなのよ。家計には響くわよね」

「物価が上がっていくと、お客様の預金が実質的に目減りしていってしまうことになります。こちらのグラフをご覧ください。同じ1,000万円でも、何も運用しない場合と、年率3%で運用する場合だと、なくなるまでの期間が3年以上長くなるのです」

「でも投資って難しいんでしょう?」

「ご安心ください、”投資信託”という言葉をお聞きになったことはございますか?」

 

はまりました。”物価が上がると、お金の価値が目減りしていってしまう”という問題意識を植え付けた後ならば、投資信託を勧めたときの相手の理解度が違います。

本日は、「ラップ型投信」という分類の商品を売りつけることにしました。

 

「こちらの○○ラップという商品は、プロの投資家が、投資環境に応じて運用の中身を柔軟に変更するタイプのファンドです。中長期の期間で、元本を安定的に増やすことに主眼をおいています。1,2年でどうこういうものではなく、長く持つことで資産を安定的に増やせる初品です」

「そうなの。しばらく使う予定もないし、やってみようかしら」

ようやく、初めての制約をいただくことができました。

 

今回は、投資信託未経験のお客様に投資信託を売りました。これは「投信口座新規」として、収益とは別の管理項目の+項目となります。

銀行の個人営業の目標は、預かり収益と住宅ローンにとどまりません。付帯項目として、投資信託新規、NISA講座開設、NISA口座稼働、カードローン、クレジットカード、デビットカードなど、多岐にわたります。当然、全てについて報告が求められます。

さて、今月の獲得はこの投信新規1件のみ。あと2日で、収益598千円と、投信新規1件と、住宅ローンシフト1件と、クレジットカード2件と、デビットカード2件のノルマをこなさないといけません。

 

そんな中、既に今月の目標を達成した営業の先輩方が、こんなことを話されていました、

「明日ゴルフのうちっぱ行くぞ」

「先輩もう目標いってますもんね」

「あれお前は?当然いくんだよな?」

「明日の午前中に保険1,000万入る予定なんでそれで収益いきます」

「さすが。いかなかったらラーメンおごれよ」

「先月、先々月とおごったんで今月は勘弁してくださいよ(笑)結婚してから懐厳しいんですよ(笑)」

「数字いってないお前が悪い。数字いってない営業はいる意味ないからなー(笑)」

 

営業は目標を達成していれば日中遊んでようが、サボってようが何も言われませんが、目標いっていないものには詰めという制裁が待っています。

私も、このままでは、支店に居づらくなってしまう・・・

 

~次回⑬預かり営業編Ⅲへ続く

 

※この物語はフィクションです。